2017年9月就航のLCC・Peach(ピーチ・アビエーション)新路線(仙台-新千歳)。この新路線利用を目的に先日札幌を訪問しましたが、その際にホテル客室内で見つけたのが、宿泊者向けの無料貸与スマホ「handy」です。
本日のお宿。部屋に何かおいてある。 pic.twitter.com/jHEcyeJiSv
— まきはら とよかず (@sosuke14jp) 2017年10月17日
「最近設置場所も少しずつ増えている」なんて話も耳にしていたので、実際に持ち出し、機能や使い勝手を試してみました。
この記事ではホテル宿泊者が無料で使える貸出スマホ「handy」の機能や端末の性能を紹介します。
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記事の目次
はじめに:handyとは
handy(ハンディ)はホテルの客室に設置し、宿泊者向けに無料で貸与されるスマートフォンです。
市内および国際通話、インターネット利用が無料。また設置場所(地域)周辺のシティガイドへ簡単にアクセスできる設計で、宿泊者の立場では“ガイドマップ+α”として使えます。
一方で設置するホテル側にとっても、宿泊者の利便性向上だけでなく、宿泊者向けの情報をプッシュ通知で届けることができるなど、双方にとってメリットのあるサービスです。
handyを設置するホテルは日本国内でも増加中。handyの設置があるホテルは、handy公式サイトから検索できます。
▼今回handyを見かけた京王プラザホテル札幌
handyの外観デザイン
handy公式サイトでプロダクトのページを覗いてみても、記載されているのはhandyという“サービス”について。実際に使われている端末(機種)についての情報は見当たりません。
そこでここからは私自身が実際に遭遇したhandyをもとに、外観デザインから基本となる機能、カメラ、デバイスの仕様や性能をレビューしていきます。
まずは外観デザインを写真で紹介。
▼前面は黒。左下にhandyのロゴ、また中央にはホームキーとしても使える物理キー
▼側面から背面にかけてはTPU系のカバーが装着されていた
▼上にはイヤホンジャックとマイク
▼右には電源キーと(その右隣に)音量調整キー
▼下には専用のコネクタが装着された外部入出力端子
▼左には何もなし。左右側面に設けられた立体的な格子デザインで持ちやすい
▼handy(左)とApple iPhone 8(右)
後述しますが、今回試したデバイスはInFocusブランドの製品「InFocus VZH」をベースとしたもの。ディスプレイサイズは5インチ台前半で、荷物に追加して持ち歩きやすい本体サイズでした。
▼貸与物だがケース付きなので安心して持ち出せる
▼ケースは紺色(ネイビー)。つや消しが施されサラサラとした手触り
なおhandy本体とケースは接着剤や両面テープを使って?なのか、かなりしっかり固定されていました。落下の衝撃でケースが外れて二次災害→弁償という悲惨な流れも、さほど心配はいらないだろうと感じました。
handyの機能
handyはAndroidをベースとして独自のカスタマイズが施されたソフトウェアを搭載。使い始めるにあたり、まずはシステム言語を選びます。日本国内のホテルに設置されているものは主に海外からの旅行者向けを想定しているはず。しかし日本語を選んでの使用も可能です。
▼初期画面。表示は英語
▼日本語を選んで使うこともできる
▼handyのホーム画面
▼ホーム画面で左から呼び出せるメニュー
handyで主要な使いみち(機能)は「シティガイド」「ユーティリティー(アプリ)」「ブラウザー」「マップ」「通話」の5つ。
シティガイド
最主要な使いみちは「シティガイド」。設置されているホテルの立地にあわせて用意された観光地情報、アクセス方法などのガイド情報を閲覧できます。
▼シティガイドの中でさらに「ショッピング」「グルメ」などジャンル毎の分類がある
▼コンテンツを表示したところ。写真と文章でまとめられた内容
▼【旅程に保存】は“あとで読む”機能。気になる情報をまとめてチェックできる
シティガイドのコンテンツはhandy専用の内容ではなく、提携している既存のWebコンテンツをほぼそのまま表示しています。
▼例えば交通ガイドは、訪日外国人観光客向けWebマガジン「MATCHA」のコンテンツだった
ユーティリティー(アプリ)
handyが搭載するソフトウェアはAndroidをベースとしたもの。Googleアプリを含むプリインストールアプリもいくつかあり、自由に使えます。
▼アプリの一覧画面
▼Googleアプリ。ログインすれば自分のGoogleアカウントでも使える
▼SNSや文字入力アプリは必要に応じて追加する。この追加作業にはGoogleアカウントの登録は不要
画面上から呼び出せる通知エリア・クイック設定エリアも確認。下の写真は配置換えをするための編集画面を開いた様子ですが、そもそもクイック設定エリアからアクセスできる機能はかなり制限されていることがわかります。
▼クイック設定エリアに配置できる機能はかなりシンプル
マップ
ホーム画面上でも下部にわかりやすく配置されている「マップ」のボタン。こちらはhandyにインストールされているGoogle Mapsを呼び出すショートカットボタンになっています。
▼普段使っているGoogle Mapsそのまま
通話
handyでは音声通話も利用できます。市内および国際電話は宿泊者側での費用負担もありません。
▼私物のスマホに発信してみたところ、番号は非通知だった
▼ダイヤル画面で見つけた自局(handy)の番号。国番号の後ろは「050」だった
▼電話帳には困ったときに役立つであろう連絡先をプリセット
その他
ユーザー側で操作する機能以外に、印象的だったのはホテル側からのプッシュ通知。宿泊しているホテル内のレストランで使える割引情報などが、毎日定期的に届きました。
▼ホテル側から配信されるプッシュ通知
handyのカメラ
ネット検索やガイド・マップ情報と同じがそれ以上に、観光中によく使うスマホの機能といえば「カメラ」。handyでは背面にカメラを備えており、通常のスマホと同様に写真撮影が楽しめます。
▼背面カメラは最大800万画素のでの静止差撮影に対応
カメラアプリのメイン画面は非常にシンプルなデザイン設計。とはいえガイド線は表示できるなど、多少のカスタマイズは可能です。
▼カメラアプリのメイン画面。ケースと同じ紺色を基調としたデザイン
なお上の写真において切り替えボタンが見つからないことでも気が付きますが、今回試したデバイスは前面カメラ非搭載でした。
実際に撮影した作例と感想
handyのカメラ(800万画素に設定)で撮影した写真の作例を載せておきます。いずれもリサイズ以外の加工は施していません。
自分の目で見た景色と比べると、全体的に色はややキツくでる印象。ただ光量を確保できれば遠くの被写体も割りとしっかり記録することができました。
一方試す中で明らかな性能不足を感じたのが、夜間など暗いシーンでの撮影。ノイズが乗る・乗らない以前に、フォーカスの精度がイマイチ。1回のフォーカス(動作)にも時間がかかり、かつ指定した場所にピントが合わないことが多々ありました。
▼てれび塔に点灯した時刻にピントを合わせたのだが……
handyでは外部入出力端子に専用コネクタを装着。(コネクタを外さない限り)handyのカメラで撮影した写真はネット経由での取り出しが基本となります。この手間を考えると、写真は手持ちのスマホやデジカメで撮影するほうが賢いですね。
少なくとも「あえてhandyのカメラでの撮影にこだわる」必要はありません。
handyの通信機能
音声通話とともに、宿泊者側での費用負担なしで無制限に使えるのがモバイルデータ通信。NTTドコモのネットワークを使っており、4G(LTE)での通信にも対応。ただ通信速度はあくまで“無料のサービス”という内容。
▼4G(LTE)接続時の通信速度。時間帯を問わず速度はほとんど同じだった
無料で使える強みから、有効な使いみちとなりそうだったのがテザリング。ただしこちらもSSID(Wi-Fiスポット名)や暗号化キー(パスワード)の編集はできるものの、テザリング接続を試みると数秒で自動遮断されるように設計されていました。
handyならではの一工夫あり
handyをホテルの部屋から持ち出してアレコレ使ってみる後、忘れずに済ませたいのがデバイス内のデータ消去。前の利用者が撮影した写真が残っているのも嫌ですし、自分の使った痕跡を残したままにしておくのも嫌ですよね。
この点ではhandy側に一工夫が。初期設定の画面でチェックアウトの日付を設定しておくと、チェックアウト確認後にデバイス内のデータを自動消去してくれる機能がついていました。
▼チェックアウト日の指定画面
▼チェックアウトの日付が確定するとデータが自動消去されるとのこと
できればデータ消去は自身でしっかり済ませ、handyが初期状態に戻ったことを確認してからチェックアウトを済ませたいもの。ですが万一のうっかりや突発的な事情(朝寝坊など)で消し忘れてしまうリスクを考えると、設定しておけば便利に使える機能でしょう。
▼できるだけ自身の手でデータ消去することを意識したいもの
handyの仕様・性能
handyはAndroidをベースとしたソフトウェアを搭載しており、Googleアカウントでログインすれば、プリインストールされているGoogleアプリに自身のアカウント情報を紐付けて使えます。
もちろんGoogle Play経由で好きなアプリを追加インストールすることも可能です。
ここでは設定画面で確認したhandyの仕様に関連する情報、そして3つの主要ベンチマークアプリを使って測定したベンチマークテスト結果も載せておきます。
仕様情報
まずは設定画面で確認できる、仕様に関連する情報。
▼デバイス名は「VZH」。OSバージョンはAndroid 7.0(開発コード名:Nougat)
▼認証の確認画面。技適マークが確認できるほか「SHARP」の文字も見つかる
▼システムメモリ容量は2GB。うち空きは0.32GBで、容量の余裕は少なめ
▼内蔵ストレージ容量は16GB。うち空きは8.33GB
▼チップセットはGeekbench 4だとMSM8917(Snapdragon 425)と認識された
ベンチマーク測定結果
Geekbench 4(CPU/GPU)、AnTuTu Benchmark、3D Mark(Ice Storm Unlimited/Sling Shot)で測定したベンチマークスコアも参考までに紹介。
▼GeekBench 4(CPUテスト)のテスト結果
▼GeekBench 4(GPUテスト)のテスト結果
▼AnTuTu Benchmarkのテスト結果
▼3D Mark(Ice Storm Unlimited)のテスト結果
▼OSバージョンが新しいのでSling Shotも動く
さいごに
たまたま宿泊したホテルで見つけたhandy。日本在住者が国内旅行で使うシーンに限ると、私物のスマートフォンでなく、あえてhandyを部屋の外に持ち出してまで使うメリットは正直限られていますね。
ただ例えば「宿泊中の暇な時間に“雑誌を見る感覚”で観光地情報をチェックする」「普段は携帯電話を持っていない家族に連絡手段として持たせる」といった使い方には十分活かせそうです。
一方で海外旅行時に現地のホテルで見つけた場面を想像してみると、海外滞在中には割高になりやすい音声通話やモバイルデータ通信もお金を気にせず使うことができる存在として重宝する可能性は、十分考えられます。
handyを設置しているホテルはhandy公式サイトにて検索できます。もし興味があれば、次回の旅行や出張時、handy目当てで宿泊先を探してみるのもよいかもしれませんね。