CP+2016のPanasonicブース

今年2月25日(木)~2月28日(日)の間、横浜のパシフィコ横浜/大さん橋ホールで開催されたカメラと写真映像のワールドプレミアショー CP+ 2016(シーピープラス 2016)

初日がPanasonicのコミュニケーションカメラ最新モデル LUMIX DMC-CM10 と被っていたことから、個人的には「絶対にCM10の実機展示があるだろう(そして詳しい話もいろいろ質問できるだろう)」と考え、楽しみにしていたイベントでもありました。

実際当日は LUMIX DMC-CM10 のブースも設けられており、しかもたまたま話を聞こうとお声を掛けた方がコミュニケーションカメラの開発プロジェクトマネージャーという偶然。個人的に気になっていたことを確認してきました。

そのままイベント開催から既に2ヶ月以上が経過(汗)とりあえずメモ書きレベルではありますが、せっかくなので聞いた内容を記事に書き起こしておきます。

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CM1→CM10へモデルチェンジ後も性能・機能がほぼ同じ理由

モデルチェンジとなりつつも、CM1から機能面がほぼ変わらなかったCM10。この点に関しては、コミュニケーションカメラのコンセプトを維持しつつ、より多くの人が手に取りやすい製品にしたかったからというのがその理由といえそうです。

イベント当時にいろいろとお話をお聞きした中で何度も出てきた話題のひとつが「CM10の開発にあたり最も意識したポイントのひとつがCM1を設計・開発した際のコンセプトを損なわない」とする開発テーマ。

中途半端に新機能を搭載することで「携帯性の高さ」「大型センサーによる撮影機能」「スマホのようにシェアできる気軽さ」といった、もともとのコミュニケーションカメラ自体の開発コンセプトを損なうことは避ける。こういった意識がかなり強く伝わってきました。

一方で日本国内においては2,000台の台数制限をかけて販売した前モデルのCM1に対して、購入することができなかったユーザーからの反響もかなり大きかったとのこと。またCM1を実際に使ったユーザーの利用方法を確認する中では、想定以上に音声通話機能が使われていなかったことも判明。

CM1自体がもともと現時点において完成形に近いかなり洗練された製品であったともいえるかもしれませんが、コンセプト、ユーザーの要望と利用実態を加味した上で、従来よりもカメラ寄りにシフトさせた結果がCM10といえるでしょう。

確かにせっかく購入しやすくなったモデルから、コミュニケーションカメラとしての魅力がなくなっていたら意味がありませんよね。そう考えると、実際に利用されていなかった機能を省くことで20,000円前後も価格を下げることができたというのは改めて素晴らしいことに感じられました。

音声通話機能が省かれスマホでなくなった理由

音声通話機能に関しては前の項でも触れたとおり、CM1ユーザーの利用実態を確認する中で、当初Panasonicが想定していたよりも電話として使っている方が少なかったため、機能自体を省いたとのこと。

なおCM10では通常の音声通話に必要な機器自体が搭載されていないことから、今後もソフトウェアアップデート等によって音声通話機能が復活する可能性はないそうです。どうしてもCM10で通話をしたい場合はVoIPなどを活用することになります。

CM1に搭載されていた独自端子用のアクセサリーは発売された?

CM10ではストラップホールが新たに設けられましたが、もともとCM1ではここにアクセサリーなどを装着するための専用端子が配置されていました。とはいえアクセサリー類の取扱いといった話は聞いたことがありませんでした。

もしかしたら私が知らないだけなのかも……と思い確認してみましたが、日本国内外を問わず、Panasonic純正品としてこの端子を利用したアクセサリーは発売されていないとのことでした。

なお純正品でなく、3Dプリンターを用いて作成したサードパーティー製のカメラグリップなどは海外通販サイトMATENRO-HKなどで取扱いがされていますね。

Panasonic自体が専用純正アクセサリーを開発する可能性は?

前の項と併せて、今後Panasonic自体がコミュニケーションカメラ用の純正アクセサリーをリリースする予定も確認。こちらも現時点で計画はないとのこと。

理由のひとつとして聞いた話がCOTTAが高品質の製品を多数展開してくれているからというもの。確かにCM1の時からジャケットカバーなど複数の上質なアクセサリーを提供しているCOTTA。CM10の発売に併せては(個人的にも待望していた)ガラスフィルムの取扱いも始まりました。

CM10とCM1は本体サイズなどのベースデザインはほぼ変わっておらず、アクセサリーの使い回しも可能。その他、Turtleback(タートルバック)などでは望遠や広角のレンズを外付するためのエクステンションチューブなども販売中。

それらを踏まえると確かに改めてPanasonicが純正アクセサリーを今のタイミングでリリースする必要はそこまでない感じもしますね。

Android 6.0 MarshmallowへのOSアップデート予定は?

Android機をより長く使い続ける上で気になるのがOSアップデートの対応。ちなみにCM10およびCM1には現在Android 5.0.2 Lollipopが適用されています。

こちらは残念ながら、現時点においてはAndroid 6.0 MarshmallowへのOSアップデート実施は未定とのこと。

2015年3月にCM1が国内発売された際は、その2ヶ月後にアップデートが降ってくるという早い対応があっただけに、個人的には今後も同様に期待していた部分ではあります。

これについては、そもそもCM1で国内発売から短期間でアップデート(Android 4.4 Kitkat→Android 5.0 Lollipop)が提供できたのは、国外でリリースされた2014年秋から準備をしていたためだったのだとか。

専用の画像処理エンジン(ヴィーナスエンジン)を搭載するなど、一般的なスマホとは少し異なった設計になっていることもあり、ソフトウェア開発にも難しさがあるそうです。

なお仮にCM10へアップデートが行なわれた場合、同じタイミングでCM1にもアップデートがくるのかも確認してみましたが、こちらも現段階ではなんとも言えないとの返答をいただきました。

光学ズーム機能などの新たな機能の搭載は検討されている?

スマートフォンに関しては現在他社製品で光学ズーム対応を謳うモデルなども登場しています。コミュニケーションカメラに関しても、現時点ですでにこういった新機能搭載の構想はあるのだろうか?という点も気になるところ。

今回は具体的に「光学ズーム対応なども今後の案として検討しているのか」とストレートに聞いてみましたが、コミュニケーションカメラとしてのコンセプトを損なわずに搭載できる魅力的な機能があれば、取り込んでいきたいということでした。

例に挙げた光学ズーム機能であれば、搭載することで本体の厚みが増える、またはセンサーサイズが小さくなるといった弊害が出てしまいます。ここを今後クリアしていけるのかが、新機能搭載に関しての大きな課題といえますね。

対応周波数の見直しは検討項目になかったのか?

CM1については日本国内向けも含めたグローバル向けモデルと北米向けの2モデルが存在。ただグローバル向けモデルの対応周波数をみると、必ずしも現状の日本国内での仕様にがっちりローカライズされているとはいえません。

ここについて見直しがなかったことに関しては特に理由こそ聞かれなかったものの、現時点ではグローバル向けモデルと北米向けモデルの2種類での区分けしか考えていないという話でした。

DMC-CM10は海外でも販売されるか?

前モデルのCM1は、もともと2014年秋に欧州(ドイツ)で注目を浴び、日本やアメリカ、アジア圏での展開へと繋がっていきました。一方でCM10はどうなるのか気になっていたわけですが、CM10に関しては、少なくとも現時点においては日本国外で発売する予定はないそうです。日本限定モデルと認識しておいてよいでしょう。

日本国外においては、CM1自体が特に販売台数に限定数が設定されているわけでもなく、それもあっての対応といえそうです。

「Wonderlink LTE Lシリーズ」が使えるのはCMシリーズだけ?

CM10のリリースと併せて、今回Panasonicの新しい取り組みとなっているのがLUMIX CMシリーズ専用のSIMカードと謳われる「Wonderlink LTE Lシリーズ」の提供。

プラン毎に設定された高速データ通信容量の上限に到達した後でも、上りのデータ通信に限り速度規制をしないとする仕様は非常に特徴的といえます。コミュニケーションカメラのコンセプトである「スマホのように写真を気軽にシェア・アップロード」との相性も抜群といったところ。

Wonderlink LTE Lシリーズに関しては、私自身も5GBプランを実際に契約して使用中。実際に試して気がついた他のMVNOが提供するSIMと大きく違う点として、APN情報が公開されていない(設定も不要)ということが挙げられます。

APN情報をチェックしてみると、接続に必要となるパスワードが空欄になっています。これはどういう仕組みなのか気になるところ。

ということで実際に「どのようにしてパスワード無しでの接続を可能としているのか」「本当にLUMIX CMシリーズ専用なのか」を訪ねてみたところ、パスワードを予めソフトウェア内部に組み込むことで通信を実現。この情報を一般公開しないことでLUMIX CMシリーズ専用になっているとのことでした。

もともとPanasonic自体がMVNOとしても事業を展開していることを利用してリリースしたこのプラン。CMシリーズだけに限定すれば利用者の母数もそう多くはなく、結果的に帯域の混雑も防ぐことができるというよく考えられた設計になっています。

コミュニケーションカメラ開発における最大の苦労点は?

CM1からすっかりコミュニケーションカメラの虜になってしまった私ですが、最後にどうしても直接聞いてみたかった「コミュニケーションカメラの開発において最も苦労したポイント」を伺ってみました。

そこで返ってきた回答、すなわちコミュニケーションカメラの開発にあたりもっとも苦労したポイントはUI設計

コミュニケーションカメラの開発は、もともとPanasonicでスマホ開発に携わっていた人たちと、Panasonicのカメラ文化を作り上げてきた人たちの協業により進められたもの。それぞれの専門家が製品に求める(必要と感じる)機能にはズレもあります。この部分(価値観)をよりよい(そして何より新しい)製品をつくり上げるためにすり合わせていくところに最も苦労があったそうです。

改めてCM10やCM1をチェックしてみても、コントロールリングで撮影設定を変更できる機能はカメラの観点から。両手で構えた際、右手親指で快適にタッチ操作ができるUI設計はスマホ開発の観点から。それぞれの魅力が上手に組み合わされたものだと感じさせられます。

4.7インチというコンパクトサイズでありながら、フルHDの高解像度仕様となっているディスプレイもひとつの例です。せっかく大型のイメージセンサーを搭載することでスマホにないボケ味を実現したのだから、撮影した写真がその場できちんと確認できるようにしたいというこだわりが込められているとのことでした

最後に

といったわけで、メモ書きレベルですが、今回実際に質問してきたことは以上です。本当はもっとじっくりと書き込みたい細かい内容もあるのですが、そこまで手をつけ始めるといつまでたっても書き上がらない気がしたので、それはまたそのうち何かに絡めて。

LUMIX DMC-CM10が発売してから2ヶ月ちょっと。2016年5月9日現在においてAmazon.co.jpなどをチェックしてみても、既に希望小売価格から40,000円近い値下がりを見せています。

音声通話機能こそありませんが、それ以外はソフトウェアもシンプルでスマホとしてもそこそこ。加えてカメラというジャンルに分類されているだけあり、カメラ機能はスマホとは一線を画する仕上がりになっています。

今回紹介した内容も含め、もし興味を持っていただけたようであれば、コミュニケーションカメラの1ファンとしてぜひ、一度手にとってその魅力を感じてみてほしいと思います。