ITmedia感謝祭

2015年2月20日(金)に東京・ニコニコ本社で行われたITmedia読者感謝祭に参加してきました。その中で米ロックバンドOK Goの最新アルバムに収録されている曲「I Won’t Let You Down」のミュージックPV制作に関する話を映像ディレクターの原野守弘氏から直接聴くことが出来たので、この記事ではその内容をまとめておきます。

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今世界で話題のPV「I Won’t Let You Down」

そもそも「OK Goって?」「I Won’t Let You Down?」という方のために、OK Goの「I Won’t Let You Down」のミュージックPVを貼っておきます。アーティスト名や曲名にピンとこなくても、このPVを見たら「見たことある(あるいは聞いたことある)」という方も多いはず。

このミュージックPVは日本(千葉県)で撮影されています。ちなみに冒頭に映っている3名の女性はPerfumeです。このあたりからも話題になっていることでPVを見たことがあるという方も多いと思います。

そしてこのミュージックPVの映像ディレクターを務めたのが、今回お話を聴くことが出来た原野守弘氏です。

ITmedia感謝祭

PV撮影のポイントなった2つの技術

このミュージックPVの撮影にはUNI-CUBとドローンという2つの技術が用いられています。

UNI-CUB

今回のPVでOK Goのメンバーなどが乗っている乗り物がUNI-CUBです。ホンダが開発している乗り物で、体を傾けることでの体重移動だけで通常の歩行と同様の自由自在な動き、そして両足の間に収まるコンパクトなサイズを両立したパーソナルモビリティとのこと。

UNI-CUB

ただそうはいっても、見た感じでは自在に操れるようになるまでにはかなり時間がかかりそう。PVを見たら分かる通り、曲のスピードに合わせてみんなスイスイ乗りこなしてますからね。ただ話を聴くと、PV撮影時には音楽の再生スピードを0.5倍速にするという工夫が施されていたそうです。ちょうど別に公開されているOK Goへのインタビュー動画を見ると、どのような感じで撮影されたのかが分かります。

なお原野守弘氏がUNI-CUBの存在を知ったのは今から7〜8年前で、当初目にしたのはモーターショーでお披露目されていたプロトタイプだったそうです。

またOK Goといえば毎回ユニークなミュージックPVを制作することでも有名ですが、PV製作時にはお金を掛けずにコラボレーション(=スポンサーを募集)で制作するというスタイルを取っています。今回のPV制作に関しても例外でなく、当初は3社ほどにコラボレーションの話を持ちかけて、最終的に残ったのがホンダだったとのこと。

ドローン

「I Won’t Let You Down」のミュージックPVを見ていると、明らかに空撮の場面とそうではない(と思える)場面がありますが、撮影は全てドローンを用いて行なったそうです。最初から最後まですべてドローンで撮りっぱなし。もちろん、かなり高度な技術が要求されます。

ドローンはDJI社のものを使ったそうです。こういうの、最近よく見かけるようになりましたよね。

DJIのドローン

ただし、今回のミュージックPV撮影時にはドローンを上空700mまで飛ばしたりもしています。市販品だと25mも浮上させたら横風のやられてしまうそうで、相当な試行錯誤を重ねてガチガチに改造されたドローンが使われたとのこと。ちなみに上空700mという高さについては、撮影現場周辺を囲っている湖まで映そうとした時に必要な高さになっています。

また撮影時に一番時間を要したのもこのドローンに関することで、ズバリ風止み待ち。全体の長さが約5分のPVを0.5倍速で撮影するため、撮影自体に要する時間が約10分。さらにそこにドローンが昇って、降りて・・・という時間も含めると約12分ほどの時間ドローンを飛ばし続ける必要があったそうです。つまり連続して12分間風が止むタイミングが必要ということ。

ドローンの改造、そして風止みのタイミングを図っていたは撮影現場に技術屋(ただしドローンや天候に関する専門家ではない)として参加していた通称ドローンおじさん(笑)話を聴いている感じ、このおじさんの貢献度はかなりのものなのですが、クレジットには会社名や個人名は入っていないそうです。というのも、本人に打診をしたところむしろ「入れないで欲しい。また改造したドローン本体もなるべく公開しないでほしい」と言われたそう。なんでも、改造したドローンが映像に映ってしまうと、見る人が見れば改造の方法が分かってしまう。そしてどの会社(あるいは誰)が関わったのかが分かってしまうと、しばらくの間ドローン関係の仕事ばかり来るようになってしまうから、だとか。

予め計算された拡散の仕方

「I Won’t Let You Down」のミュージックPVがここまで話題になった要因のひとつはSNSなどを通じた拡散です。OK GoのPVは毎回結構な話題になります。ただ今回のPVに関しては、これまでの拡散の流れとは少し異なったものにするための仕掛けを予め計算して仕込んでいたそうです。

原野氏いわく、TwitterやYoutubeなどの拡散の流れを世界全体で追っていくと、拡がり方には傾向があるそうです。ざっくり言うと「英語圏→スペイン語圏→ポルトガル語圏、フランス語圏、ドイツ語圏→日本、アジア圏・・・」の流れで拡散していくことがほとんどとのこと。

しかし今回のミュージックPVに関しては、前述のとおりPerfumeを出演させるなど、これまでのOK GoのPVには無かった工夫を施すことで、YoutubeでのPV公開後はアメリカと日本でほぼ同時に拡散が始まっていったそうです。

日本はYoutubeのアクティブユーザーが世界的に見ても多いので、拡散スピードも早く、結果的にOK GoのPVの中でも最も拡散のスピードが早い作品となっています。

最後に

以上、「I Won’t Let You Down」のミュージックPV制作秘話に関してでした。

アーティスト(OK Go)、UNI-CUB、ドローン、SNSによる拡散と、いずれも個人的には興味のあるものだったので、話を聴く中で考えさせられることも多かったです。とりあえず、今回この話を聴けただけでもITmedia読者感謝祭に参加した価値はありました。

ちなみにOK GoはPVが先行して話題になることが多いですが、曲も良いので、まだ聴いたことがない方は是非一度お試しあれ。Youtubeで検索すると、ユニークなPV付きでたくさんヒットしますので。

by カエレバ