マッドマックス 怒りのデスロード ジョージ・ミラー監督来日記者会見

いよいよ明日6月20日(土)より全国ロードショーにて公開となる「マッドマックス 怒りのデス・ロード」。この映画を撮影したジョージ・ミラー監督の来日記者会見が6月5日に東京・六本木のニコファーレで開催されました。今回はそのイベントの参加レポートです。

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非現実をとことん突き詰めた先にある新たな”リアル”

今回20年ぶりのシリーズ最新作となる「マッドマックス 怒りのデス・ロード」。作品と記者会見を通じてジョージ・ミラー監督の今作にかける思いとして強く感じたのは 非現実の追求による、新たな”リアル”の追求 でした。一見振り切れていて”リアル(現実)”なんて微塵も感じられなさそうな本作ですが、従来とは別な方向からアプローチをしていくことで、新たな”リアル”をつくりあげています。

制作に携わる人全員で非現実を追求する

記者会見の中でジョージ・ミラー監督が語っていたのが「今作では人間が飛ぶわけでもなく、また宇宙船が出てくるわけでもない。そんな内容だからこそ、本物の環境で、本物の車両を使い、本物の人間が演じることで、とことんまで非現実を突き詰めた」ということ。当然ながらこういった取り組みには危険も必ず隣り合わせとなるため、撮影において監督が何よりも配慮したことは”安全の確保”だったそうです。

マッドマックス 怒りのデスロード ジョージ・ミラー監督来日記者会見
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

劇中の中でも最も撮影が大変だったシーンはポールキャッツと呼ばれるアクション。これは劇中で何度か登場する、棒高跳びのようにしなる棒に捕まり、走行中の車両の上を飛び移るアクションのことです。

実際に走行している車両上でこのアクションを行なうことは本当に難しく、はじめは止まっている車両の上で行なったアクションと走行している車両をCGで合成して再現しようと考えていたそうです。しかし「リアル」を追求する気持ち(と監督の配慮)はスタッフにも伝わり、撮影の合間にも練習が重ねられ、いつしか気がついた時には8人のスタッフが実際にこのアクションをやってのけるようになったとのこと。主演のトム・ハーディーもチャレンジしたそうです。

アクション以外に、カメラワークでも非現実にこだわるためのスイートスポット確保に苦労したそう。劇中には車両が横転するような激しいシーンが何度も登場しますが、こういったシーンでは迫力と危険が比例して大きくなっていきます。この2つのバランスを考え、両立することは本当に大変だったとのこと。

こだわるからこそ生まれる、こんなエピソードも

一方で、こだわりから生まれた、今となっては笑えてしまうこんなエピソードも。

環境へのこだわりとして、当初撮影はオーストラリアの鉱業都市ブロークンヒルでの実施を予定。この都市の気候は”ステップ気候(年間を通じて降水量が少なく、雨季に限り少量の雨が降る)として有名で、最も一般的な自然災害は砂嵐とまさに今作の撮影にうってつけに思える環境。

しかしそんな地域が撮影前に起こった記録的な豪雨により、なんとお花畑へと変貌(笑) 塩田地帯にはペリカンやカエルまで出現してしまい、作品イメージとは全くもって似つかわしくない環境へと変わってしまったそうです。結局1年待っても環境が元に戻ることはなく、撮影場所をアフリカ西部のナミビア(ここは”絶対に”雨が振ることがないといわれているそう)へ変更することに。

環境、資材、演者。いずれもとことん「非現実」にこだわりをもって追求することで、結果的に今作は新たな”リアル”へと到達しています。この話は当然試写会のあとで知ったエピソードですが、試写会で作品を観た際に感じた「非現実をとことん追求すると現実になる」という印象には、想像以上の熱い熱いこだわりが積み重なって生み出されていたということがわかりました。

記者会見を誰よりも楽しむ監督

今回の記者会見の様子はニコ生でもリアルタイム配信されており、会見会場内にも四面の壁のうち三面に巨大なスクリーンが設置され、そこにリアルタイム配信を見ているファンからの書き込みが流れ続けていました。

そしてこの様子を誰よりも興味深く見続け、時には話しの流れを断ち切ってまで反応していたのがジョージ・ミラー監督本人(笑)基本的に反応を示していたのは英語のコメントでしたが、司会者と通訳が話を進める中で「OH! SUSHI! SUSHI! HAHAHA!」と遠慮無く喜んでみせる姿には、会見の目的を別にして、何よりもこの場を楽しんでいるように映りました。

マッドマックス 怒りのデスロード ジョージ・ミラー監督来日記者会見
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

マッドマックスという作品だけを見て終わっていたら決して抱くことがなかったであろう、とても無邪気な印象も伝わってくる会見で、本当に日本を楽しんでくれていると感じられたことが嬉しく思えました。

こういう”誰よりも楽しむこと”に長けている人だからこそ、マッドマックスからベイブまで、振り幅広く、よい映画を撮り続けられるのだと妙に納得。

最後に

記者会見の一番最後に監督自ら語ったメッセージは「映画は楽しんで作っているが、当然苦労もある。しかしそれでも観客の反応を感られる瞬間は嬉しい」というもの。実際にこの マッドマックス 怒りのデス・ロード には観ている人を惹きつけ、そして心を揺れ動かす力があります。

制作に携わる人全員が非現実をとことんまで突き詰めて完成した、どこまでもリアルな作品です。ぜひ劇場で(字幕で!3Dで!)観ることをオススメします。